MENU

【ゴルフギア取材の裏コラム】クラバーのピンっ!ときた話

【第3回】やさしい3Wのキーワード

深重心にすると高重心になりやすいって、知ってますか!?

ゴルフギアの開発ストーリーを取材していると、しばしば"二律背反"という言葉に出くわす。たとえば、「飛んで・止まる」。ボールを遠くに飛ばすには余計なバックスピンを減らした方がいいが、そうするとグリーンで止まりにくくなってしまう。「飛んで、止まらない」になりがち!というやつだ。また、ヘッドの重心設計でよく聞く、「深・低重心」というのもその類いではないかと思う。

ヘッド重心を深くするほどフェース面上の重心は高くなってしまい、上がりやすくはなるのだが、バックスピンが多くなってしまう。それでは、と重心を下げるために重心を浅くしていくと、今度はロースピンになったが上がりにくくなってしまう。ウッドクラブの設計においては、この非常に悩ましい"二律背反"がエンジニアの前に、常に立ちはだかっているわけである。

よく「○○テクノロジーで"二律背反"を打ち破る!」という紹介もみかけるが、個人的には"二律背反"とは、そう簡単に覆せるようなものではないと思う。多くのメーカーを取材していて感じるのは、"二律背反"とは力でネジ伏せるようなものではなく、「あっちを立てればこっちが立たず」のバランスをいかにうまくとっていくか、そのさじ加減なのではないかということだ。

優れたメーカーはそのバランス(さじ加減、按配)を前モデルの評価を見ながら修正し、ニューモデルに反映していく能力が高い。ロボットではなく、ゴルファーが打った生きた球が教えてくれる結果を大切にし、次モデルでは確実にバランスを整えてくるのである。

やさしさ・上がりやすさ・適正スピン。最もバランスが難しいのが3W。

個人的にPING G410シリーズを一通り打ってみて感じたのは、3Wが劇的に打ちやすくなったということだ。とくにフェアウェイ上から想定飛距離を出しやすくなった印象だったのだが、ここにもやはり、前作G400でのフィードバックを踏まえた新しい重心設計があるのだという。

G410のシャローフェース。ヘッドの天井を低くすることで低重心化が進み、打点と重心が一致することで、曲がりの少ないロースピン弾道が生み出せる。

「G400の3Wは体積の大きいストレッチ3に見られるように、深重心設計による慣性モーメントの拡大と打ち出し角度の向上に主眼をおいたシリーズでした。G410に関しては、シャローフェースにして低重心化を図るだけでなく、フェース寄りに重心位置を近づけたことで、高初速を実現しながら、バックスピンを抑えることで、理想的な弾道が可能になったのです」(ピンゴルフジャパン 開発・企画担当者)

従来モデル比では間違いなく低重心といっていいほど、うまく出来ていたG400だったが、ヘッドスピードが速いタイプに対応したロースピンモデルがなかった。そこが次モデルであるG410の開発ポイントになったというのだ。

「クラバーさんに打ってもらった3Wは「G410 LST」で、最も低重心&フェース寄り重心設計のロースピンモデルとなります。これはヘッドスピードが速く、バックスピンが多めになってしまう方だけでなく、アイアンタイプのスイングで入射角が鋭角になるタイプのゴルファーにも好評です」(ピンゴルフジャパン 開発・企画担当者)

G410 LSTは確かにコンパクトなヘッドサイズで、フェースの作り方(外形的なもの/F.P値)もどこかアイアンのように構えやすい印象だった。これがフェアウェイにあるボールを打つ時にターゲットイメージをしやすく、とても打ちやすく感じさせたのだ。

バランスというところに話を戻すが、PINGのFW(3W)はこのLSTモデルが加わったことで、選べる幅が広がり、明解にもなったように思う。G410は、ミッドサイズのスタンダードモデルで、やさしさと初速感のバランスがちょうどいいモデル。「G410 SFT」は、それよりもオーバーサイズでありながら、心地よいつかまりも追求したモデル。そして、「G410 LST」は3Wのみのラインナップで、バックスピンが多い、あるいはアイアンタイプのスイングをする人向けである。

アドレスでの投影面積を比べても、LSTはとてもコンパクト。
逆にSFTは安心感の持てるヘッドサイズ。

適正キャリーをしっかり出すために、ボール初速・打ち出し角度・バックスピン量・つかまりのバランスをとることが必要になる。
そのためにG410シリーズでは、スタンダード、SFT、LSTの3モデルがある。

最後にいい3Wの条件とは何か?と考えてみたい。

それはおそらく、ドライバーとの距離差が20ヤード以内となるものだろう。3Wの役割は"どこまでも遠くへ"ではなく、ドライバーとのギャップが開きすぎないことだ。ドライバーが240ヤードなら、3Wは220ヤード飛ぶもの。フェアウェイからでも、適正キャリーがしっかりと出せるものを選びたい。3Wで必要な高さが出ない場合は、5Wも視野に。そうすることでドライバーとの距離差が埋まり、コースマネージメントがしやすくなることもある。

クラバー

高梨 祥明Yoshiaki Takanashi

ゴルフ専門誌のギア担当として、長く国内外のゴルフメーカーの開発中枢を取材。2013年に独立しフリーライター/編集者として活躍中。愛称のCLUBERは、GOLF CLUB LOVERを縮めた造語。

このページをシェアする

twittertwitter
facebookfacebook
youtubeyoutube
instagraminstagram

このページのTOPに戻る