自分のお子さんがこれからゴルフを始めるとしたら、
どんなクラブを購入すべきか悩むこともありますよね。
ナショナルチームのコーチを務めるなど、
ジュニア育成の最前線で活躍する岩本砂織コーチに、
ジュニアのクラブ選びや考え方について
くわしく教えてもらいました。
ゴルフを始めたばかりの頃は、まともにボールに当たらないことも多いでしょうし、クラブは何でも良いと考えるかもしれません。とりあえず自分が持っている“大人のクラブ”を使わせるケースもあるでしょう。大事なことなので最初に話しておきますが、ジュニアゴルファーに“大人のクラブ”を使わせるのは絶対にダメです。上達を妨げるだけでなく、腰を痛めるなど、ケガにつながる危険性があるからです。実際に、大人のクラブを使い続けて肋骨を骨折してしまった等のケースを私自身も複数知っています。
ジュニアゴルファーたちは成長途上で、当然ながら大人よりも小さいですし、筋力もありません。そんな時期に、長くて重い“大人のクラブ”を無理に振ってしまうと、体が伸び上がったりとスイングに変な癖がつきやすくなりますし、体にも強い負荷がかかります。これは非常に危険です。何より問題なのは“大人のクラブ”を使うことで、より一層、ボールに当たらなくなり、ゴルフが楽しくないと感じてしまう恐れがあることです。もしかしたら、すぐにゴルフをやめたいと考える子だっているかもしれません。せっかくゴルフと出会い、興味を持ってもらえたのに、そんな結果になってしまったらとてももったいないですよね。
今回は「ジュニアのクラブ選び」について、気を付けるべき点などを徹底解説していきます。クラブにこだわることで、ジュニアゴルファーの上達スピードは確実に早くなりますし、何よりゴルフをとことん楽しむことができるようになります。ぜひ、ジュニア向けクラブを購入する際の参考にしていただければと思います。
ジュニアのクラブ選びで何より大切なのは、身長に合わせたシャフト長とライ角のクラブを使うことです。
最適な長さのクラブなら、アドレスで手元が最適な位置に収まり、ボールとの距離も適正になります。ライ角はリーディングエッジとシャフトの向きで作られる角度を指していますが、これも身長が伸びるほど、アップライトに調整して、常にソール全体が地面に当たるようにすることが大切です。ライ角が合わずに、アドレスでトゥやヒールが浮いた状態になると、インパクトでフェース向きが左右にブレやすくなるからです。
一方で、最適な長さ、ライ角のクラブを使えば、スイングはみるみる向上していきます。私の経験上、体に合ったクラブを使っているジュニアゴルファーは、ほんの少しアドバイスをしただけで、真っすぐボールを打てるようになります。成長著しい時期ですから、最初から体に合ったクラブを使っているかどうかは、後々大きな差になります。
PINGが展開するジュニア向けブランドの『Prodi G』は、シャフト長やライ角を細かく調整して、体に合わせたオーダーメイドのクラブを作ることが可能となっています。また、PING直営店や全国のジュニア対応店舗では、無料でフィッティングを受けることができますので、ぜひ活用してその時の身長に合った最適スペックをチェックしてもらうと良いでしょう。
ジュニアの子供たちは日々成長し、身長はどんどん高くなっていきます。当然ながら、最初は体に合っていたクラブも徐々に合わないものに変化していきます。個人差はありますが、大体身長が5センチ伸びると振り心地に違和感を感じ始め、10センチ伸びると球のバラツキが出てくることが多いです。もし、それまで安定したショットが急激に荒れて、球のバラツキが出始めたら、それはクラブを交換する時期に来たサインだと捉えてください。
前述したようにライ角が合わなくなると、インパクトのフェース向きがブレやすくなります。つまり、真っすぐ飛ぶ良いスイングをしたとしても、クラブが合わないことでボールは左右に散ってしまうのです。このタイミングでスイングをいじって、弾道を変えようとするとせっかく身に付けたスイングが崩れてしまいます。ぜひ、改めてフィッティングを受けて、クラブの調整を検討してみてください。
ちなみに『Prodi G』のクラブを5本以上購入すると、無償で1回シャフトの延長やライ角の変更といったスペック調整に対応してもらえます。成長の度にクラブを買い換えるのはコスト的な負担も大きくなりますから、こういったサービスを利用して、ジュニアゴルファーが最適なクラブを使い続けられるようにしていただきたいです。
ジュニアの子供たちにぜひ取り組んでほしいのがショートゲームの練習です。フェースをコントロールし、球筋を打ち分ける感性を磨くには、ジュニアの頃が最適だからです。大きくなって飛距離が伸びた時に、磨き上げたショートゲームの技術は大きな武器になります。
もちろん、ショートゲームを磨くには、どんなクラブを使うかも大切になります。
ウェッジなら、さまざまなソールグラインドのクラブを打って、地面への当たり方や抜け方の違いを体験すると良いでしょう。『Prodi G』は、アイアンの流れのピッチングエッジ、54度と58度のウェッジそれぞれに違ったソール形状が採用されています。特に58度に採用されたHグラインドは、フェースを開いたりと技が使いやすい形状になりますので、さまざまな球を遊び感覚で打ち分ける練習をすることで、アプローチのバリエーションがグッと広がるはずです。
パターも可能な限りさまざまなヘッド形状を打って、違いを感じ取ってほしいです。『Prodi G』でも「ANSER」と「TYNE H」の2タイプがラインナップされていますが、構えた時の印象は全く違いますし、ストロークの感覚も違ったものになるでしょう。さまざまなタイプのヘッドを知ることで感性が磨かれ、それを続けることで自分に合った最高の形を見つけることができます。そうなれば、パッティングはその子にとって大きな武器になっているでしょう。
この記事を最後まで読んでいただけたということは、ジュニア向けクラブの購入を真剣に考えているということでしょう。改めてになりますが、ジュニアゴルファーが最初に手にするクラブは、その後のゴルフ人生を左右するくらい、とても大切なものです。ぜひコストをしっかりかけて、良いクラブを使わせてあげてほしいというのが私の本音です。体に合った良いクラブを使うことで着実に上達することができますし、ケガをすることもなく、大人になっても長くゴルフを楽しむことができますよ。
解説・岩本砂織
いわもと・さおり。山口県出身。1992年、世界に通用するプロゴルファー育成を主旨とする「スーパーレディープロジェクト」に合格し、渡米。US LPGAツアー88勝のキャシー・ウィトワースに師事し、ゴルフの基礎やマネジメント、トレーニング理論、メンタルトレーニングなどを学んだ。その後ティーチングの道を志し、東京2020オリンピックでは、JGAナショナル強化部会テクニカルコーチとして選手の育成にも尽力。現在は横浜元町の「SALTO GOLF」を主宰し、プロゴルファーや多くのアマチュアゴルファーを指導している。