ゴルフを始めたいけど、どう練習すればいいか分からないビギナーの方へ。PINGが誇る「敏腕プロコーチ」が、格段に上達スピードがアップするゴルフスイングの大切な基本を伝授します。第5回は高瀬順弘コーチです。スイングの本質を知ることで、迷うことなく上達できますよ!
このページの内容
\レッスンのポイントを
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ゴルフを始める時に、最初に覚えるべきことは何でしょう。グリップの握り方やアドレスの作り方を想像される方が多いと思います。もちろん、これらも大事なことですが、初心者の方にグリップやアドレスの細かな指導を行っても、上手く動けずに体が固まってしまう方が多いです。止まった状態で「型取り」をするような形になるわけです。これではスムーズなゴルフのスイングは身に付きません。
私はレッスンをするに当たって、ゴルフが決して特別なスポーツではないことを皆さまに知ってもらい、その上で楽しんでもらいたいと考えています。ゴルフというスポーツの本質は、クラブという「道具」を使って、ボールを強く「叩く」、たったこれだけなのです。
道具を振り、モノを叩く。これは人間誰しもができるシンプルな動きです。難しい動きは必要ありません。まずはこの発想の転換ができれば、上達スピードが圧倒的に早くなり、プロのような効率的で美しいスイングもすぐに身に付きますよ。
クラブという棒状の道具を振って、ボールを強く叩くことで遠くまで飛ばす。スイングをシンプルに考えることができれば、習得も容易になります
ゴルフを特殊なスポーツと捉え、スイングの細かな型ばかりを考えると動きはぎこちないものになります。本質を理解することで、上達スピードが大きく変わります
私のレッスンでは、最初はボールを打ちません。「インパクトバッグ」という練習器具をひたすら叩くことから始まります。しかも、右手1本でアイアンを逆さに持ち、グリップで叩いていくのです。上からでも、斜め上からでも、横からでも叩き方はなんでもOK。とにかく強く、スピーディに叩くにはどうすればいいか考えてもらうことが目的なのです。
叩くことを続けるうちに、手首を支点にスナップを効かせるようにクラブを振ることで、力を込められることに気づくはずです。トンカチで釘を打つことをイメージすると分かりやすいでしょう。手の動きは小さく、対照的にクラブの動きは大きくなることで運動量が増え、どんどん強く叩けるようになります。
最終的にはボールを打つのと同じように、横からバッグを強く叩けるように練習してもらいます。体本来の動きで横から強く叩こうとすることで、自然と右肩が少し下がり、クラブをインサイドから下ろすようになります。この時点ですでにゴルフの正しい動きがかなり身に付いているはずです。
クラブを逆さに持つ時、右手の指の付け根、第一関節のあたりにクラブが当たるように握るのがおすすめです。手首のスナップが使いやすくなり、クラブの運動量を大きくして強く叩きやすくなります。
まずはイメージしやすい上から叩く動きからスタート。だんだんに斜め上から叩く動きに変え、最後はゴルフと同じ横から叩く動きへとステップアップさせるのがおすすめです。
地面にあるバッグを横から強く叩くには、クラブをインサイドから下ろす必要があります。通常、ゴルフのスイングでインサイドから下ろすのはかなりの練習が必要と言われますが、横から強く叩く練習を繰り返せば自然に身に付きます。
右手1本で強く叩けるようになったら、そこに左手をプラスしていきましょう。ご存知のとおり、ゴルフでは両手でクラブを握って振っていきますが、左手は時にクラブの加速にブレーキをかけてしまうことがあります。せっかく身に付けた右手で強く叩く動きを邪魔しないように、少しずつ振る動作に左手を足していきましょう。
まずは左手で右手の前腕を持った状態で振っていきます。前腕の下側を持つのがポイントで、右手の肘から下がスムーズに動くので、より効率的な動きが身に付きやすくなります。この状態に慣れてきたら、次はクラブに触れていきます。と言っても、いきなり握ってしまうと力みが生まれやすいので、左手の親指と人差し指の2本でクラブをつまむようにすると良いでしょう。最終的に左手でもクラブを握った状態で、右手をしっかり使って叩けるようになれば、スイングはかなり完成に近付いています。
いきなりクラブを握ると力みが出やすいので、まずは右の前腕をつかむことから始めます。上からではなく、下からつかむことがポイントです。
右手をつかむのに慣れたら、次はクラブです。左手の親指と人差し指でつまむと、右手の邪魔をせずに左手を合わせられます。この状態に慣れたら、左手もクラブを握りましょう。
両手で強く叩けるようになったら、最後はバッグをどけて、振り抜く練習に入ります。叩くイメージをしっかり残して「叩き抜く」ように振ることが大切です。レッスンでは「透明なバッグを叩き抜いてください」と伝えています。ボールを強く叩き、フィニッシュまで振り抜くことが、飛距離と方向性を両立する重要なポイント。ボールを実際に打つ前にこの「叩き抜く」感覚を磨いてください。
ただ振り抜くのではなく、透明なバッグがあることをイメージして、叩いてから振り抜くことが大切です
叩く練習として並行して行ってほしいのが、アイアンでボールを転がすことです。1メートル先にボールを置き、そこに向かってコツンとボールを打っていくのです。フェースが真っすぐ当たれば1メートル先のボールに当たりますし、開けば右に、閉じれば左に外れます。小さな動きですが、これを繰り返すことで、スイング中にフェース向きをコントロールする感覚が磨かれるのです。
真っすぐ当てる練習だけでなく、あえて右や左に外す練習も行うとより効果的です。ショットの安定感を高めると共に、上級者になった時に身に付けたい弾道の打ち分けもすぐにできるようになりますので、ぜひ取り組んでみてください。
ショットと同じようにアドレスを取り、ボールをコツンと打って転がす練習です。ターゲットに対して構えることやスイング中にフェースを感じて、向きをコントロールする感覚を磨くことができます。
1メートル先のボールを基準にすると、インパクトでフェースがどこを向いていたのか分かります。最初はフェース向きがなかなか感じ取れないかもしれませんが、練習を繰り返すうちに正確に感じ取れるようになります。
繰り返しになりますが、ゴルフのスイングには決して特別な動きは必要ありません。誰でも効率的なプロのようなスイングを身に付けることができます。大切なのは「叩く」という目的をしっかり持ってスイングをすること。ゴルフのスイングっぽい上手い形を作ろうとするのではなく、どうすればクラブで、ボールを強く叩けるのか、この1点だけを考えて練習に取り組めば、驚くほどスピード上達できますよ。
たかせ・よしひろ。東京都出身。日本大学ゴルフ部で腕を磨き、卒業後は宮崎県フェニックスゴルフアカデミーの「ゴルフプロ育成研修制度」に所属し、欧米流スイング理論を学ぶ。28歳からコーチの道に進み、2014年から鶴見功樹ゴルフアカデミーでインストラクターを務める。最新理論を分かりやすい言葉で伝える丁寧な指導が人気を集めている。