ゴルフを始めたいけど、どう練習すればいいか分からないビギナーの方へ。PINGの誇る「敏腕プロコーチ」が、格段に上達スピードがアップするゴルフスイングの基本を伝授します。第6回は小野寺誠コーチです。スピード上達して、長くゴルフを楽しむために必要なスイングの大切な基本の「キ」を皆さんに教えたいと思います。
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ゴルフというスポーツの難しさは、手の位置からボールに当たるフェース面までが遠いことにあります。しかもスイングしていて、フェース面は開いたり、閉じたりします。ゴルフを始めたばかりではそもそもボールに当てるだけでも難しいですし、ちょっと当たるようになってもボールは曲がり、ダフリやトップも出るでしょう。
それだけに最初のうちは、ボールに当てることに必死になってしまう人がほとんどです。好き勝手にクラブを振って、たまたまバチンと当たればOK。それなりに気持ちいいですし、満足感もあるでしょう。若い人であれば、しっかり飛距離も出るかもしれません。
ゴルフというスポーツは、練習にたくさんの時間を費やせば確実に上手くなれます。しかし、当てることばかりに注力して上手くなった場合、遅かれ早かれ、大きな壁にぶつかることになります。それは飛距離が出ないことです。当てようとするあまり体の動きが小さくなるため、ヘッドスピードが出にくいからです。そのまま年を重ねれば、飛距離はみるみる落ちていきます。それではたくさん練習してきたのに、ゴルフが楽しくなくなってしまいますよね。
私のレッスンでは、「ゴルフの寿命が長くなる」スイングを身に付けてもらうことを重視しています。そのために、ゴルフを始めた最初の段階でしっかりヘッドスピードの出る体の動かし方を身に付けてもらいます。ボールに当てることはその次で良いのです。体を正しく使ってスピードを出すことを覚えておけば、10年、20年、30年とゴルフを続けて、筋力が落ち、体の可動域が落ちたとしても、自然なスイングができて、しっかり飛距離を出すことができます。ボールを飛ばせれば、ゴルフはもっと楽しくなりますよね。今回は、そんな長くゴルフを楽しめるスイングの大切な基本のキを皆さんに教えたいと思います。
ゴルフは時間をかけて練習すれば、ある程度、安定してボールに当てられるようになります。しかし、そんな「当てにいく」動きばかりに注力してしまうと、体の動きが小さくなり、飛距離に悩む日が必ず来ます。そこでもっと飛ばしたいと思って、当てる動きをキープしながらヘッドスピードを上げるのは困難です。まずスピードを出す体の動きを覚え、続いて、勝手にクラブに「当たる」スイングを覚えるのが上達の近道です。
では、ゴルフを始めて最初の覚えるべき体の動きとは何でしょう。それはずばり上半身を左右に回す動きです。
ゴルフのようにクラブを振るスポーツでは、スピードを出すための助走が大切になります。スイングで言うと、クラブを目標方向とは逆に上げるバックスイングのことで、ここで十分に体を回すことで速く振るための勢いを付けることができます。ポイントは顔の位置をキープしながら、胸や肩といった体の部位を大きく左右を入れ替えることです。この動きを大きく素早く行えるようになれば、ボールを飛ばすための大きなパワーになります。
まずは胸の前で両腕を交差させるように組んで、アドレスの姿勢を取ります。そこから上体を右、左と横に回していきます。アドレスのポジションからスタートし、バックスイングでは胸を90度右に回し、そこを起点にフィニッシュまで一気に180度回転させることが大切です。実はこのバックスイング:フィニッシュの回転量が1:2になる体の動きこそ、スピードをしっかり出す重要なポイントになります。ボールに当てることに注力すると、バックスイングで90度まわしても、ボールに当てることだけに注力してしまうとインパクトで体の動きが止まってしまうのでヘッドスピードが出ないのです。クラブを持たずにエクササイズをすることで、スピードをしっかり出すことに集中でき、正しい体の動かし方を身に付けることができます。
腕を組んで体を回すことに慣れてきたら、今度は両腕を大きく広げます。この状態で体を回すと、腕を振るような形になるので、よりスイングに近い感覚でエクササイズを行うことができます。ここでもバックスイングで90度、フィニッシュまで180度回転させることをしっかり意識してください。フィニッシュで左足にしっかり体重を乗せ、右肩、右腰、左足が一直線の形になるように振り切りましょう。また、腕を組んだ時に比べて、顔が動きやすくなりますので、しっかりアドレスの位置にキープして、体の軸を意識しながらエクササイズを行うことが大切です。
顔の位置をキープしたまま、体の左右入れ替えをすることができればスイング時のクラブ軌道が安定し、インパクトで一定の位置にヘッドが戻るようになります。体を入れ替えるエクササイズでは、上体を大きく左右に回してスピードを出すと同時に、頭を揺らさずに軸をキープする感覚も磨いていただきたいです。その際、アゴを意識すると顔が動きにくくなります。バックスイングでは左肩が、フィニッシュでは右肩がアゴの下に来るように体を回せれば、軸がキープできて、スピーディにクラブを振ることができるはずです。
体を入れ替えるエクササイズを繰り返すことで、体のリミッターが外れてスピーディにクラブを振る準備ができます。この段階ではボールに当てようという意識も薄くなっているはずです。ぜひ、クラブを持ったとしてもその意識のまま、最後まで振り切ることを大切にしてください。それだけで上達スピードは一気に速くなります。
そして、次の段階として覚えていただきたいのが右ヒジの使い方です。先ほどは右ヒジは使わずに体の左右を入れ替えるエクササイズでしたが、クラブを持ってこのエクササイズの動きをする時には右ヒジの動きがとても重要になってきます。
右ヒジの使い方を考える時、クギ打ちをイメージすると良いでしょう。右ヒジの位置を固定し、支点にすることで効率良く、確実にトンカチをクギに当てることができますよね。ゴルフも同じで、スイング中、右ヒジを内側に絞るようにテンションをかけ、体と腕の距離感を常にキープすることを心がけましょう。ヘッドスピードを上げるために思いっきり振り切ろうとすると体と腕の距離感がキープできずにインパクトでヘッドに当てることが難しくなります。しっかり体と右ヒジの位置を固定し、体と右ヒジの距離感を変えずにスイングできれば、自然にヘッドがアドレスの位置に戻ってきて、勝手にボールに当てってくれるのです。
スイング中、右ヒジを体の正面でキープする使い方を覚えるにはドリルを行うのがおすすめです。ストレッチ効果もありますので、ドリルをしっかり続けることで、自然とスイングもキレイなものになっていきます。
アイアンを右手で持ち、ヘッドを体の後ろ側に垂らしていきます。この時、右の上腕にシャフトが当たるように位置を調整しましょう。
垂らしたクラブを今度は左手で持っていきます。ヘッドに近い部分のシャフトを持ち、右ヒジを内側に絞るようにシャフトを引っ張っていきます。
クラブを使って右ヒジを絞った状態を作ったら、そのままアドレスの姿勢を取り、体を左右に回していきます。右ヒジが常に体の正面でキープされ、スイング中、体の近くを通る感覚が掴めるはずです。普通にクラブをグリップした時にも同じ右ヒジの使い方ができれば、ヘッドの軌道が安定し、勝手にボールに当たるスイングができるようになっています。
体の入れ替えを覚えるエクササイズ、そして右ヒジの使い方を覚えるドリルをしっかり行ったら、ぜひ普通にクラブを持って、ボールを打ってみてください。当てようと頑張らなくても、正しい体の使い方をすれば自然に当たることに驚くはずです。しかも、体を入れ替えるエクササイズにより、体のリミッターが外れた状態になっていますので、想像以上にボールが飛んでくれるでしょう。
ここまで解説してきたように、ゴルフのスイングでは、「クラブを振ったら、結果的に当たる」状態に持っていくことが何より大切です。当たるようになってからスピードを出そうとしても、思うように速くは振れませんし、またボールに当たらなくなるかもしれません。最初に「振る」こと、次に「当たる」ことを順番に身に付けることで効率良く上達し、長くゴルフを楽しむことができますので、ぜひ実践してみてください。
おのでら・まこと。1970年生まれ、東京都出身。6歳でゴルフを始め、16歳で単身アメリカへ留学。そこで江連忠プロと出会い、共に試合を転戦しながら最新のスイング理論を学ぶ。帰国後、1996年にプロテスト合格。プレーヤーとしてトーナメントに出場する傍ら、ツアープロコーチとしての活動もスタート。現在は、プロだけでなく、ジュニアやアマチュアゴルファーのレッスンも精力的に行い、指導した生徒数は6000人を超える。