それは想定を超えるデビューでした。
9月4日発売の『iDi(アイディーアイ)』ですが、
6月には蟬川泰果選手が『iDi』を
初めて使った試合で、いきなり優勝。
7月にはPGAツアー、コーン・フェリーツアーでも
『iDi』を投入した二ール・シプリー選手が
優勝しました。
発売前からこれだけ話題になった
アイアン型ハイブリッドクラブはなかなかありません。
なぜ『iDi』はプロからも評価されて、
すぐに結果が出たのでしょうか?
ピンゴルフジャパン ハードグッズプロダクト担当の
山崎力さんに話を聞くと、
その秘密は新しく搭載した空気を
活用したテクノロジーにありました。
―『iDi』は蟬川泰果選手がはじめて使った試合(BMW日本ツアー選手権 森ビルカップ)で優勝しましたが、以前からテストしていたのでしょうか?
山崎 いえ、蟬川選手がはじめて『iDi』を打ったのは優勝した試合の練習日でした。初日の2日前です。元々、蟬川選手は新しいクラブを使うことにすごく慎重な選手です。我々も試合で使うとは想像していませんでした。ただし、最初に打ったときから『iDi』の打感と弾道をすごく気に入っていました。弾道を計測しながらテストしていたのですが、ボールスピードが速くなっているのに、しっかりスピンが入って打球が上がることに満足していました。
ー中空構造のアイアンは「打感」が課題だと言われることが多いですが、『iDi』はどうやってその壁をクリアしたのですか?
山崎 今まではポリマー素材やサウンドリブを使って打感を向上させてきたのですが、今回は大幅に打感を進化させる素材が見つかりました。それが空気です。正確には空気を小さいバッグに閉じ込めた「インナーエアー・テクノロジー」です。
―インナー素材をポリマーではなく空気(エアー)にしたことで、他にメリットはありましたか?
山崎 空気の軽さによるメリットは性能面でも大きかったです。過去に使ってきたポリマー系のジェルに比べると、「インナーエアー・テクノロジー」は約40%※¹も軽くなりました。ヘッド内部を軽量化できたことによって、我々が得意とする重量周辺配分で慣性モーメントを大きくすることができました。「i クロスオーバー」と比較すると、慣性モーメントは約15%※¹も大きくなっています。

―空気を使うというのはすごく画期的ですが、どこから生まれたアイデアなのでしょうか?
山崎 ピンにはクラブの開発チームの中に、ゴルフクラブ以外の分野や様々な事象などの基礎研究を行うイノベーションチームが存在します。そこでは様々な新素材や新構造を開発・検証しており、その中で生まれたテクノロジーを、デザインエンジニアチームがゴルフクラブのデザインへと反映しています。過去のテクノロジーで言えばドライバーなどに採用されているタービュレーターやドラゴンフライ・クラウン・テクノロジー、パターの新PEBAXインサートなど、様々なテクノロジーを生み出しています。

―『iDi』をテストしている選手からは「構えやすい」という声もありますね。
山崎 今回は形状にもこだわりました。「i クロスオーバー」と比較すると、フェース長を少し短くして、グースネックの度合いを抑えています。よりスクエアに構えやすくなったと思います。一方でソール幅は広くして、上から打ち込んでもソールがしっかりと滑って抜けてくれるので、低い弾道でコントロールしやすい形状にもなっています。また、バウンス角も増やしたことで、ミスヒットやダフリに強いヘッドにもなっています。

―バックフェースのデザインもシャープでカッコイイですね。
山崎 実は、バックフェースに斜めに入っている梁(はり)はただのデザインではありません。 i-Beam(アイビーム)テクノロジーと言います。開発チームの研究により、インパクト時のヘッドへの衝撃は「トップレール」や「背面」に集中しやすいことがわかりました。そこで、この「アイビーム・テクノロジー」をヘッド内部に搭載し、インパクト時の衝撃や振動を効果的に抑えることで、より心地よい打感を実現しています。
さらに、この「アイビーム・テクノロジー」には非常に軽量な素材を採用しており、ヘッドの重心を低く設計できるため、寛容性の向上にも貢献しています。
―ちなみに今回のモデル名『iDi』はどういう意味ですか?
山崎 『iDi』はアイ・ドライビング・アイアンの頭文字です。iクロスオーバーの使用シチュエーションをデータで確認すると#2と#3は、ドライバーでは狙いにくい狭いホールでの代替で主にティーショットでの使用となっていました。一方、#4はロングアイアンの代替クラブとして使われるケースが多く、180~200ヤード前後の距離を正確に狙いたい場面で選ばれる傾向がありました。今回の『iDi』はティーショットで多用する、ドライビングアイアンとしての要素を大きく向上させた開発のためアイ・ドライビング・アイ アンの頭文字を取って、『iDi』という名前になりました。
7月に蟬川選手が優勝したコースは、男子ツアーで最も難易度が高いコースだと言われています。蟬川選手はティーショットで『iDi』を多用することでフェアウェイキープしていました。
ドライビングアイアンと聞くと難しそうだと思われるかもしれませんが、『iDi』は「インナーエアー・テクノロジー」や「アイビーム・テクノロジー」を搭載し、MOIを約15%※¹向上させることに成功しました。そして、MOIが向上することでミスヒット時でもヘッドブレを抑え、安定性も大きく向上させました。そこにはピンがこだわり続けたやさしいクラブの開発が隠されています。


中空構造の課題と言われる打感や
打音を改良するために
PINGのイノベーションチームは
「空気」を「素材」として活用する
「インナーエアー・テクノロジー」に
たどり着きました。
打感や打音だけではなく、
慣性モーメントも向上させる革新的な発想で
今までの中空構造の
イメージが刷新されるでしょう。